なぜ物が冷えるのでしょうか。今回は冷凍機の仕組みについて、冷凍技術の原理や冷凍機の主な種類、チラーとの違いをご紹介いたします。弊社ホームページには冷凍機に関する用語がたくさん掲載されています。冷凍機に興味を持った人や、基本のメカニズムを知りたい人は、今回の記事を読んでみてください。

冷凍機とは

冷凍機とは、冷凍技術を使って低温を作り出す機械装置のことです。日常生活では主に冷蔵庫、冷凍庫、製氷機、エアコンなどの内部に冷凍機が使われています。弊社がサービスの対象としている環境試験装置産業用冷熱機器の内部にも、さまざまなタイプの冷凍機が使われているのです。

そもそも冷凍技術とは? 冷熱に関する歴史

冷凍機の仕組みを解説する第一歩として、まず冷凍技術についてご説明します。

「熱」には人類の可能性とロマンがつまっています

「冷やす技術は、暖める技術に比べて格段に難しい」と言われています。何十万年も昔の太古の時代から、「たき火」という暖房技術が存在し、人類の進化とともに色々な用途に火が使われてきました。18世紀の産業革命の後、石炭や石油などの燃料をエネルギーとして利用する技術が飛躍的に進歩しました。

その一方で、冷却あるいは冷凍の技術が発展したのは19~20世紀になってからです。それまでは天然の「氷」を氷室などで貯蔵して使っていました。製氷機や冷蔵庫がアメリカで発明されて、人工的に氷を作り出せるようになったのは19世紀のことです。

冷凍・冷却の方法としては、主に3通りが考えられます。

  • 氷などの融解熱を利用する方法       … 固体→液体への変化
  • ドライアイスなどの昇華熱を利用する方法  … 固体→気体への変化
  • 冷媒や液体窒素などの蒸発熱を利用する方法 … 液体→気体への変化

天然の氷を使って、古代から行われてきたのが①の方法ですね。②の方法で使われるドライアイスは、二酸化炭素が冷えて固体になった物で、1920年代に商品化されました。
①と②の方法は氷やドライアイスが入手できれば手軽に実行できます。しかし、大規模に長時間安定して冷凍することは難しいです。また、冷却に使う氷やドライアイスをどうやって作ればよいのでしょう?

そこで、③の方法を安定的に実現するための「冷凍機」「冷凍技術」が必要になってくるのです。

日本では、1919(大正8)年に国産冷凍機の開発が始まりました。1930年代には大阪金属工業株式会社(現在のダイキン)がフロンの研究を開始しています。当時の冷凍機は非常に高価な物で、業務用が中心でした。
1950年代後半、冷蔵庫は三種の神器(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)として庶民の憧れの象徴になりました。一般向けのクーラーやエアコンなどの冷房が日本国内で普及し始めたのは高度成長期の後、つい数十年前のことです。

そもそも冷凍技術とは? 物を冷やす原理

さて。「③ 冷媒や液体窒素などの蒸発熱を利用する方法 」とは、具体的にはどういうことでしょう?

専門的な用語が多いですが、③の方法…つまり、冷凍機に使われている「冷凍技術」のそもそもの原理は、夏の「打ち水」と同じです。真夏の日差しで熱くなったアスファルトに水をまくと、涼しい風が感じられるようになります。液体だった水が蒸発して気体に変わるとき、周りから熱が奪われます。そのため、打ち水をすると温度が下がるのです。この原理は「気化熱」「蒸発潜熱」などと呼ばれ、冷凍技術の基本となっています。

水をまくと涼しくなりますね

では、蒸発した後の水はどこに行くのでしょう?
水は地球を循環しています。打ち水でまいた水は水蒸気になり、空にのぼって雲になり、やがて雨になって地上や海に戻ってきます。

冷凍機の内部でも、水の循環と同じような現象が起きています。打ち水の場合は水を使いますが、冷凍機の場合は冷却効率を高めるために、フロンやアンモニアなどの冷媒を使います。「冷媒」とは、熱のやりとりをおこなう媒体(「打ち水」の例では水)のことです。冷凍機の中で冷媒は、「蒸発」⇒「圧縮」⇒「凝縮」⇒「膨張」という4つの工程を循環し、気体と液体の相転移を交互に繰り返しています。このサイクルを「冷凍サイクル」と呼び、「蒸発」のときに冷媒が熱を吸収して対象を冷却するのです。

冷凍サイクル 蒸発⇒圧縮⇒凝縮⇒膨張 の4工程を冷媒が循環しています

冷凍機の仕組み

冷凍機にはさまざまな種類があります。冷却方法によって、蒸気圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機、その他の方式に分類できます。一般的には蒸気圧縮式と吸収式の2つが主流です。

これらの冷凍機は複数の機器から構成されていて、各機器の接続方法や冷媒の種類もバリエーションが豊富です。目的と用途に応じて最適な構成になるようにシステムを設計し、装置を組み上げます。

規模の小さな冷凍機は、家庭用のルームエアコンや冷蔵庫に使われています。大規模で大掛かりな物は産業用として、施設全体の冷房や工場のラインの冷却、冷凍倉庫、スケートリンクなどに利用されます。

色々な物を冷やしています

冷凍機の仕組みを詳しく見ていきましょう。

蒸気圧縮式冷凍機

圧縮式冷凍機(蒸気圧縮式冷凍機)は、蒸発したフロンなどの冷媒を機械的に圧縮して液化し、循環させる方式です。立ち上がりが早く、経年劣化が少ない等のメリットがあります。冷媒は配管の中を循環し、「蒸発」⇒「圧縮」⇒「凝縮」⇒「膨張」のサイクルを繰り返します。主な構成機器は「蒸発器(エバポレータ)」、「圧縮機(コンプレッサ)」、「凝縮器(コンデンサ)」、「膨張弁(エキスパンションバルブ)」で、図のように繋がっています。

圧縮式冷凍機は一般的な冷凍サイクルを使っています

圧縮式冷凍機を構成する主な要素

主な要素 役割
冷媒 熱の運搬役。フロン類や自然冷媒などが用いられる。
冷媒が状態変化(気化・液化)することで熱の吸収と放出が繰り返される。

蒸発器
エバポレータ

冷媒が蒸発して、周りの温度を下げる。
低温・低圧の液状冷媒が気化して低温・低圧のガス冷媒になる。(吸熱)
冷媒は外部の熱を吸収して蒸気になり、圧縮機に吸入される。
フィンコイル蒸発器、シェルアンドチューブ蒸発器などがある。
冷房運転中のエアコンの室内機は、蒸発器に該当する。
圧縮機
コンプレッサ
冷凍機の心臓部。冷媒を循環させる。
低温・低圧のガス冷媒をピストン等で圧縮し、高温・高圧にする。(吸熱)
圧縮機に吸入された冷媒の蒸気は高圧のガスになって凝縮器へ流れていく。
レシプロ式、ロータリー式、スクリュー式、ターボ式などの種類がある。
凝縮器
コンデンサ
冷媒の熱を放出させる。
高温・高圧のガス冷媒を冷やして、常温・高圧の液状冷媒にする。(放熱)
凝縮器に入った気体状の冷媒は冷却されて液体になり、受液器と膨張弁へ流れていく。
空冷式凝縮器(プレート式)、水冷式凝縮器(シェルアンドチューブ式)、などがある。
冷房運転中のエアコンの室外機は、凝縮器に該当する。

膨張弁
エキスパンションバルブ

冷媒の圧力を下げる。
常温・高圧の液状冷媒を小さな穴にくぐらせて冷媒の圧力と流量を調整し、
低温・低圧の液状冷媒にする。(放熱)
温度(自動)膨張弁、電子膨張弁、キャピラリーチューブなどがある。

これらの構成機器の中で、最も重要なのは圧縮機です。コンプレッサーとも言います。人間の体に例えると、冷媒が血液、圧縮機は心臓のような役割をしています。圧縮機は、冷凍作用を終えてガス状になった冷媒を吸入して圧縮し、高圧のガスにします。

圧縮機には主に4種類あります。往復動式圧縮機(レシプロ式)、回転式圧縮機(ロータリー式)、スクリュー式圧縮機、遠心式圧縮機(ターボ式)などです。特に、遠心式圧縮機を使った冷凍機は「ターボ冷凍機」と呼ばれ、主にビルの大型冷房装置として利用されています。冷凍能力の規模が異なる様々な製品があり、半導体工場、病院、石油化学工業などの空調にも使われます。

ハイレベルな冷凍能力が必要なときは、圧縮機や膨張弁を増設した物や、沸点の異なる2種類の冷媒を熱結合させた「二元式」などが採用されます。「単一冷媒による多段圧縮式」「二段圧縮二段膨張」「二元冷凍機」といった用語は、冷凍機に使われている冷媒回路の種類を表しています。

圧縮式冷凍機は-30℃程度(一段圧縮)から-100℃程度(多段圧縮)の温度で用いられますが、構成機器や冷媒を工夫して冷凍能力を高めることで、-150℃程度までの冷却が可能となります。

吸収式冷凍機

吸収式冷凍機は、化学的な性質を利用し、吸収液を使って冷媒を循環させる方式です。冷媒は「蒸発」⇒「吸収・分離」⇒「凝縮」⇒「膨張」というサイクルで循環しています。圧縮機を使わないので、運転音が静かで消費電力も少ないというメリットがあります。フロン類を使用せず、工場のスチームなどの排熱利用による省エネルギー化も可能なため、環境にやさしい冷凍機として注目されています。

吸収式冷凍機では、水に溶けやすいアンモニアやリチウムブロマイド(臭化リチウム)などの物質が使われています。

リチウムブロマイドと水を使うタイプの吸収式冷凍機

「吸収器(アブゾーバ)」で冷媒の蒸気を溶液に溶かして吸収液を作り、「発生器(ジェネレータ)」で加熱して吸収液から冷媒を分離します。発生器では、理科の実験で習った「蒸留」と同じ現象が起きています。2種類の物質が混ざった吸収液を発生器で加熱すると、沸点の低い冷媒が溶液よりも先に蒸発するため、分離・濃縮が可能となるのです。分離後の溶液は吸収器に戻して再利用します。分離後の冷媒は「凝縮器(コンデンサ)」を経由して「蒸発器(エバポレータ)」に送られ、液体と気体の相転移で周りを冷却した後、再び吸収器に戻ります。

アンモニアを使用するタイプの吸収式冷凍機は19世紀に考案されました。現在でも、産業用の大型冷蔵庫などに使われています。
リチウムブロマイド を使うタイプの吸収式冷凍機では、水が冷媒の役目をしています。蒸発器の中は低圧でほぼ真空状態のため、通常は100℃の水の沸点が7~10℃になっており、蒸発潜熱による冷却が効率的に行われます。ターボ冷凍機と組み合わせてビルの空調などによく用いられています。

その他の冷凍機

圧縮式と吸収式の他にも、鉄道の冷房として戦前に使われていた「蒸気噴射式冷凍機」、スターリングエンジンと蓄冷器を利用した「スターリング冷凍機」、ブライン溶液という不凍液を利用した「ブライン冷凍機」などの種類があります。電流によって温度差を生み出す「ペルチェ効果」を利用した「熱電冷凍機」や、磁気を使った「磁気冷凍システム」、-270℃程度まで冷却可能な「極低温冷凍機」などの研究開発も進められています。

近年では、地球環境にやさしい冷凍機が求められています。地球温暖化防止とオゾン層回復に向けた世界的な取組により、フロン類への規制は一層厳しくなっています。特定フロンの廃止と、フロンに代わる新冷媒の開発、ノンフロン冷凍機の研究などは世界的な課題です。

冷凍機とチラーの違い

ところで、少し話は変わりますが。

「冷凍機とチラーはどう違うのか?」と疑問に感じる人が多いようです。

チラー(chiller)は日本語に翻訳すると冷凍機の意味があり、原理的にはほぼ同じです。どちらも冷却能力を持ち、対象を冷やすために使われます。よく似ているので混同されやすく、業界でも厳密に区別されていません。しかし、仕組みを詳しく見ると、いくつかの違いがあります。

冷凍機とチラーの区別は難しいです
冷凍機の特徴 チラーの特徴

・各機器はワンパッケージ化されずバラバラの状態となっている

・冷風を作ることで対象を冷やす

・圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機などがある

・用途と規模に応じて、さまざまなタイプがある

・冷却にも冷凍にも対応でき、-150℃などの超低温も可能

・コンデンサ(凝縮器)以外の機器がワンパッケージ化されている

・循環液を冷却することで対象を冷やす

・冷却方法は空冷式、空冷ヒートポンプ式、水冷式、などがある

・大規模なビルや地下街では氷蓄熱ユニットが使われることがある

・液体の温度をコントロールし、冷水や温水を作る

辞書によると、チラーとは「水や熱媒体を温度管理しながら循環させて、さまざまな種類の産業機器や計測機器、食品加工機器、理化学機器などの温度を一定に保つための装置の総称」とされています。チラーの定義はメーカーによって異なります。吸収式冷凍機のことをチラーと呼ぶ場合もありますし、産業用のクーラー全般のことをチラーと呼んでいる人もいます。

このように、冷凍機とチラーの目的は共通しており、たくさんの種類があるため、区別が非常に難しいです。

弊社は冷凍機とチラーのどちらでも対応できますので、修理メンテナンスが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。


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