前回までの記事で 冷凍機の仕組み と、代表的な冷媒 についてご説明しました。
今回はフロンについての詳細をまとめます。

フロンとは

フロンとは、フッ素(F)、炭素(C)、水素(H)などで構成される人工的な化学物質「フルオロカーボン」のことです。フロンという呼び名は日本でつけられた俗称で、海外ではデュポン社のフレオン (freon)という商品名が一般的です。フロンは成分の違いに応じてたくさんの種類があり、「フロン類」と総称されます。

フロンは現在、最も一般的に冷媒として使われている物質です。
代表的なフロンは CFC クロロフルオロカーボン、HCFC ハイドロクロロフルオロカーボン、HFC ハイドロフルオロカーボンという3種類ですが、元素の結合の仕方によって、特性の異なるさまざまな物質が作られています。

それぞれのフロンにはアメリカ冷凍空調学会の基準とISO817で定めた冷媒番号が割り振られています。冷媒番号は基本的にR22、R32、R502などのようにRefrigerant(冷媒)の頭文字 “R” をつけた数字で表されます。冷媒の種類が具体的に知られている場合は、CFC-12、HCFC-22などのように物質名をつけて表記します。

冷媒番号の数字は次のような原則に従って、冷媒の化学式に含まれるフッ素原子、水素原子、炭素原子の数を表しています。

なお、冷媒番号の表記方法についてはハイフンが省略される場合や、異性体を示すアルファベットが大文字で書かれる場合もあります。上の例のR-134とR-134aでは、R134、R134Aと表記されることがあります。

代表的なフロンの種類

代表的な3つのフロン、CFC (クロロフルオロカーボン)、HCFC (ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC (ハイドロフルオロカーボン)の違いと特徴や用途について、簡単にご説明します。

片仮名の早口言葉のようで分かりにくいですが、構成する元素の名前と頭文字を使って、物質名が表されているのです。

ハイドロ … 水素(H)

クロロ … 塩素(Cl)

フルオロ … フッ素(F)

カーボン … 炭素(C)

下の表をご覧ください。さまざまな冷媒番号があります。
同じフロンの種類に属していても、冷媒番号が違えば、物質の特性は異なります。化学式に使われている原子の個数と結合の仕方が異なるため、分子量や密度、圧力、沸点、凝固点、比熱、地球温暖化係数(GWP)などの性質が違ってくるのです。

また、2つ以上の冷媒をブレンドして、元の冷媒とは異なった性質を持つ混合冷媒として使う場合もあります。冷媒番号の400番台、500番台は混合冷媒です。

CFC (クロロフルオロカーボン)

名称 クロロフルオロカーボン CFC
分類 特定フロン

代表的な物

冷媒番号

R11、R12、R502など
CFC-11、CFC-12、CFC-113、CFC-114、CFC-115

R502 (CFC-115とHCFC-22の混合冷媒)

主な用途 カーエアコン、冷蔵庫、冷凍機など
特徴 塩素原子が多く含まれており、オゾン層破壊の原因となる。
モントリオール議定書によって1996年に全廃。回収義務付け。
二酸化炭素を1とする地球温暖化係数 GWPは4660~14400で、温室効果が非常に高い。

HCFC (ハイドロクロロフルオロカーボン)

名称 ハイドロクロロフルオロカーボン HCFC
分類 特定フロン (かつては代替フロンとして利用されていた)

代表的な物

冷媒番号

R22、R123、R124
HCFC-22、HCFC-123、HCFC-124など
主な用途 エアコン、スプレーなど
特徴 CFCよりも塩素原子は少ないが、オゾン層を破壊する。
GWPは77~1810で、地球温暖化の原因になる。先進国では2020年に全廃。
広く使われていたR22冷媒が生産中止となったため、困惑するエンドユーザーも多い。

HFC (ハイドロフルオロカーボン)

名称 ハイドロフルオロカーボン HFC
分類 代替フロン

代表的な物

冷媒番号

R32、R125、R134a、R407C、R410A
HFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152aなど

R404A(R125、R134a、R143aという3つのHFCの混合冷媒。R22およびR502の代替)
R407C(R32、R125、R134aという3つのHFCの混合冷媒。R22の代替として開発された)
R410A(R32、R125という2つのHFCの混合冷媒。R22の代替として開発された)

主な用途 エアコン、カーエアコン、冷蔵庫、冷凍機、スプレーなど
特徴 オゾン層破壊の原因となる塩素原子が含まれないため、代替フロンとして普及が進んだ。
GWPは124~148000程度で地球温暖化への影響が大きい。
2016年のキガリ改正で規制対象になり、段階的に削減されることが決まった。

フロンと聞くと、皆さんはどんなイメージを連想しますか?

フロンは冷媒として非常に優秀で、開発当時は「夢の物質」と言われて期待されていました。しかし、研究調査が進むうちに環境に悪影響を与えることが分かってきました。

装置の冷媒漏洩故障やガス交換作業、違法な廃棄などでフロンが漏れると、どうなるのでしょうか。

装置から漏れたフロンは5年~20年かけて大気中を上昇して成層圏に到達し、太陽光を浴びて分解されます。その際に、分解された特定フロンCFCとHCFCからは塩素原子が発生し、オゾン層を破壊してしまいます。代替フロンHFCの場合は塩素が使われていないため、オゾン層を破壊する心配はありません。 しかし、フロン類は全体的に温室効果が高く、二酸化炭素を1とする地球温暖化係数(GWP)は77~14800となっており、地球温暖化に大きな影響を与えます。

フロンに対する規制

オゾン層破壊と地球温暖化に対応するために、国際的な取り決めがかわされています。ウィーン議定書(1985年)とモントリオール議定書(1987年)で、特定フロンCFC(代表としてR12など)は1996年までに全廃されました。代替フロンとして当時の主流になったHCFC(代表としてR22など)も京都議定書で削減対象とされ、2020年までの全廃が決まり、生産と輸入が終了しました。ただし、装置の内部や市場に現在もあるCFC冷媒、HCFC冷媒は、再生して利用することが出来ます。

また、2016年に採択されたキガリ改正(モントリオール議定書の改正案)により、代替フロンHFC(代表としてR404A、R407Cなど)が新たに規制対象とされています。

日本国内では、フロン排出抑制法(2015年施行)でフロン類の製造から廃棄までの管理が義務付けられました。また、改正フロン排出抑制法(2020年4月施行)で、廃棄時の違反に対する罰則が強化されています。

(参考:経済産業省パンフレット「フロン排出抑制法の概要」 freo_pamphlet.pdf (meti.go.jp)

フロン対策が必要です

所有設備や冷凍空調機器のフロン対策はお済みでしょうか?
使用されているフロンの種類は把握していますか?

業務用の冷凍冷蔵機器やエアコンについて、所有者によるフロン管理が義務付けられています。廃棄処分時も義務があり、 2020年施行の改正フロン排出抑制法で、廃棄時の違反に対する罰則が強化されています。 エンドユーザーの場合でも、きちんとフロン対策をおこなっていただく必要があります。
冷凍冷蔵機器やエアコン等の空調の他にも、冷水器、工場の生産ライン用の冷却器、冷凍冷蔵車の貨物室、船舶用エアコンなどが対象になります。

業務用のフロン機器の所有者(管理者)には、次のような義務があります。

管理の義務

・保有する全てのフロン機器をリストアップし、機器ごとに記録簿



(ログブック)を作成する。

・全てのフロン機器を対象とした簡易点検の実施。

・一定規模以上のフロン機器について、専門知識を持つ者による定期点検の実施。



(法定点検、有資格者点検)

・修理メンテナンスで冷媒の充填回収をおこなった時は証明書を受け取り、記録する。

・フロン類の年間算定漏洩量を集計し、基準を超えた場合は国へ報告する。

廃棄時にも義務があります。

フロン機器を廃棄する時の義務

・フロン類の回収を業者に依頼する。

・回収依頼書または委託確認書を交付する。引取証明書を業者から受け取る。

・記録簿と、回収依頼書または委託確認書、引取証明書を廃棄後3年間保存する。

・機器を中古品として譲渡・販売する場合は、対象機器の記録簿を渡して管理を引き継ぐ。

このように、フロンが充填された業務用の冷凍空調機器を所有しているユーザーには管理義務があり、機器ごとの記録と証明書の保存が求められています。対象となる機器を大量に所有している場合は、かなりの手間が掛かります。
煩雑な書類管理の負担を軽減し、お客様の業務効率化をサポートするため、弊社では RaMS(冷媒管理システム)を導入しています。フロン管理に関連する多様な記録、帳票、証明書、報告書を電子データで管理し、ペーパーレス化を推進しています。
また、機器を処分する際に問題となる超高圧フロン冷媒の回収も弊社なら可能です。R13、R23、R503、R508A などの低沸点フロンガス、および R14、R116 などが回収できます。

2020年にR22冷媒などの特定フロンHCFCが生産終了しました。
今後は、R22に関連する冷凍空調機器の部品や充填用の冷媒が入手困難になるため、修理メンテナンスは難しさを増します。弊社では、古い装置やR22等を使用した機器を所有するお客様をサポートするため、IoT予知保全システムや、改造修理冷媒変更改造・レトロフィットなどをご提案しています。


特に、IoT予知保全システムは、故障の兆候を早期発見して再生冷媒や修理部品を早めに調達できるので、トラブル防止と修理の迅速化には非常に効果的です。


冷媒変更の場合は冷凍回路を改造して、生産が中止したR22をR407Cに変更したり、規制対象になったR404AをR448、R449等へ変更したりすることで、装置を長くお使いいただけるようにします。

点検とメンテナンスから、冷媒管理、修理・改造まで。弊社はワンストップでお客様のお困りごとを解決します。フロン対策に関するお悩みは、弊社にご相談ください。


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